
「紋章水滸伝」とは?
成人向けの匿名掲示板「PINKちゃんねる」内の
「オリキャラ板」にて、
2006年7月2日に立てられた、「設定共有型」のなりきりスレッド――
それが『紋章水滸伝』です。
ファンタジー世界を舞台に、参加者たちは
「108人の紋章の英雄」の一人として
キャラクターを作成して、キャラハンとして参加し、
あるいは名無しとしてNPCや敵役を演じながら、
即興で物語を紡いでいきました。
キャラハン1人につき1キャラクターという制限のもと、
参加者それぞれが自分のセンスや知識を持ち寄り、
多彩で魅力的なキャラクターたちを生み出していました。
もちろん、トラブルもありました。
けれど、即興だからこそ生まれるケミストリーもあり、
時には、素晴らしいストーリーや、美しいシーンが
自然と形作られていきました。
また、成人向けである事から、比較的に
自由度の高い創作空間でもあり、
シリアス、ギャグ、恋愛、戦闘、そして
少し(?)大人向けの表現まで、
さまざまな物語が日々生み出されていました。
PL同士の打ち合わせや情報共有の場であった
「避難所」も大いに盛り上がり、
ネタ雑談やパロディ、SSなども数多く投稿されました。
キャラク ターメイクの相談や設定の推敲も活発に行われ、
キャラハンや名無したちは互いに知恵を出し合いながら、
より魅力的なキャラクターを作ろうとしていました。
――しかし、良いことばかりではありませんでした。
2000年代の匿名掲示板文化の中では、荒らしや叩き、
過剰な批評なども珍しくなく、
ちょっとしたことでもフレーミングや炎上が起きました。
いつ止むとも知れない、心無い言葉に傷つき、
去っていった参加者もいます。
傷ついた仲間たちが去っていく辛さに、
残った者も胸を痛めていました。
「さよなら」なんて、誰にも言いたくなかった。
それでも。
あの頃、深夜のアドリブから生まれた熱狂。
持ち寄ったセンスの化学反応。
キャラクター同士が偶然かみ合った瞬間にしか生まれない、
一期一会の空気感。
それらは、今でも色あせていません。
どうか、あの頃のことを、少しでも思い出していただけたなら。
夢中でストーリーを考え、
台詞を練り、
ネタ雑談に笑い合い、
誰かの反応に胸を躍らせていた日々を。
想像のスクリーンに映し出された、きらめく瞬間を。
そして、あの頃の「あなた」を。
どうか、肯定してあげてください。
表現の巧拙はあっても、
皆、それぞれに懸命に創作へ向き合っていまし た。
観客の視線や中傷に怯えながらも、
それでも何かを生み出そうとしていました。
きっと、あなたのキャラクターを愛していたのは、
あなただけではないはずです。
いまここに、不完全ではありますが、
ログを公開いたします。
未完の物語を。
鍵を失くした宝箱を。
胸に刺さったままの思い出を。
どうか、もう一度、かわいがってあげてください。